無くした切符たちの行方
去る者は追わず。 それがぼくの座右の銘。 自分の意思とは関係なく、ポケットの中に入れていたものが、 煙のように姿形をきれいに消してしまったとしても それは仕方のないことなのだ、と思うようにしている。 ぼくは電車の切符をす…
去る者は追わず。 それがぼくの座右の銘。 自分の意思とは関係なく、ポケットの中に入れていたものが、 煙のように姿形をきれいに消してしまったとしても それは仕方のないことなのだ、と思うようにしている。 ぼくは電車の切符をす…
子どものころ、祖父母の家に柿の木があった。 その柿の木は秋になると小さな柿の実をたくさんつけた。 下から手を伸ばしても柿の実に届かないが、 2階の窓から手を伸ばすといくつかの柿を取ることができた。 その柿は…
記憶の引き出しは頭の中にちゃんとある。 木製の古いデスクにギイギイと音のする冷たい椅子のついた箱の中のような書斎があって、 その引き出しの中に時系列に記憶が雑多に並べてある。 破れて読めない記憶や、あとから継ぎ足したよう…
旅は順調そのものだった。 たくさんの人と会った。 ベトナム人も、日本人も、中国人も、韓国人も、フランス人、ロシア人もいた。 皆、一人旅をしていた。 言葉はほとんど通じないけれど、曖昧な英語と身振り手振りで、 一緒に笑った…
街で偶然懐かしい人とすれちがう。 あ、と思う。 日常のありふれた景色の中でも一瞬で見覚えのある顔を判別できる。 約3年ぶり。 その人は僕を憎んでいる。 少なくとも最後に話した時には、そうだった。 僕もその人のことをとても…