無くした切符たちの行方

去る者は追わず。
それがぼくの座右の銘。

自分の意思とは関係なく、ポケットの中に入れていたものが、
煙のように姿形をきれいに消してしまったとしても
それは仕方のないことなのだ、と思うようにしている。

ぼくは電車の切符をすぐになくしてしまう。
新幹線のような大きなものから在来線の小さなものまで
ありとあらゆる切符がどこかに行ってしまう。

駐車場の駐車券、航空機のチケット、コインロッカーの鍵。
そういうたぐいのものも同様にどこかに行ってしまう。

手にしたチケットや鍵たちをぼくはポケットに放り込む。
彼らは息をひそめてポケットの中でしばらくはじっとしている。

ぼくが彼らの存在を忘れたころに
隠していた手足をにょきにょきと生やして、
ぼくのポケットから気が付かないように脱出を図っているのだろう。

気が付くと手品のように彼らは消えてしまうのだ。

子どものころをは良く大人にそのことを怒られた。
だらしがない、馬鹿だ、なさけない、しまう場所を決めろ、云々…

大人になった今となっては誰にも怒られることがない。
くよくよしても仕方がない。
旅に出た彼らをぼくに止める権利はないのだから。

切符ならきっとぼくのポケットを抜け出した後、
のんびり電車の旅でも楽しんでいることだろう。

誰にも見つからずに目的地までたどり着いて、彼らの安住の地でのんびり過ごせるとよいな、と思う。
せっかく決死の覚悟で脱出したのだから。

そう考えると新幹線などの追加料金も笑顔で払える。
…ほど心は広くないが、多少は気分的に良いことをしたと思えるようになる。

Have a nice trip!

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