記憶の引き出しは頭の中にちゃんとある。
木製の古いデスクにギイギイと音のする冷たい椅子のついた箱の中のような書斎があって、
その引き出しの中に時系列に記憶が雑多に並べてある。
破れて読めない記憶や、あとから継ぎ足したような記憶もその中には混ざっていて、
全部が正しい記憶とはもちろん呼べない。
時々僕は頭の中のその小部屋の中で、
ひとりぼっちの時間を過ごす。
主に新しい記憶の整理のために訪れるのだが、
その途中に出てくる過去の記憶と対面して、そのたびごとに手を止めて過去の記憶を漁ってしまう。
これはもういらないかな。
もう忘れてもいいかな。
そう思うものはごみ箱に捨てる。
ごみ箱の中は底のない井戸みたいなものになっていて、
そこに投げ込んだ記憶は二度と取り出すことはできなくなってしまう。
今日もまた僕はその小さな小部屋で過去の思い出たちと戯れている。
