雨のにおい

昔、泣くと雨のにおいのする女の人がいた

しとしとと降り続く長雨のようなにおい

まるで梅雨の朝のような

 

その人はしくしくとは泣かない

えーんえーんと子供のように声を上げて泣いた

 

一度泣き出すといつも長いこと長いこと泣いていた

 

ぼくはいつも近くにいて馬鹿みたいに

その姿をずっと見ていた

 

声をかけることも

近づくこともできずに

 

いつか雨雲が通り過ぎて雨のにおいがなくなるまで

 

時々そんな日々のことを懐かしく思い出す

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