子どものころから霧吹きが好きで、用もないのに霧吹きに水を入れて部屋の中でシュッシュと所かまわず吹きかけた。
カーテンやこたつの中をびしょ濡れにして怒られたことがなんどもある。
ある日、いつものように霧吹きの置いてある物置をのぞいてみると、所定の場所に霧吹きはなかった。
母が隠したことくらいはすぐに察しがついた。
部屋のあらゆる場所を開けて、探して、高いところは台を使って、母が隠しそうな場所を探してみた。
洗面台の下の洗剤たちの奥の方にそれはあった。
すべての洗剤たちを押しのけて、手を伸ばして霧吹きをつかんで引っ張り出す。
苦労して霧吹きを見つけた喜びと興奮を、僕は部屋中に霧吹きを吹きかけることで表現した。
40分後に帰宅した母は、部屋を見た瞬間に絶句し、隣近所に聞こえるほどの怒号を披露する羽目になったのは言うまでもない。
あの日から幾分付き合い方は変わってしまったが、今だに霧吹きとの蜜月は続いている。
