僕の知り合いで文字でのやり取りを常に敬語の人がいる。会話をするときは自然な口語体なのだが、文字でのやり取りのみ丁寧な敬語なのだ。LINEのようなフランクなコミュニケーションツールを使用していても固い言葉を使う。出会いから十数年が経過していて、それなりに親しい間柄にもかかわらずだ。
僕は最初からそのことに違和感があって、なぜ文章でのやり取りだけ敬語なのか?ということをかなり最初の段階で聞いたことがある。その人は癖みたいなものだ、といった。文章になると意識せず丁寧な敬語でのやり取りになってしまう、と。不思議なものだなぁと思いつつもいつものことなのでそのうち気にならなくなっていた。
出会ったときから年齢を重ね、自分もある程度きちんとした言葉遣いをしなければいけなくなったと自覚し始めたころから、きれいな言葉遣いができる人への尊敬の気持ちが強くなってきた。改めてその人の昔の文章を読んでいて、とてもきれいな敬語を使って話してくれていたことに気が付いた。謙譲語や尊敬語をさらりと使い分け、適切な言葉を選んでくれていたように思う。ずっと文章でやり取りしていたのに僕はそのことに気が付かずにいたのだ。
言葉はたくさん知っているはずなのに、意識しなければ僕らは大体同じような表現方法の中で生きているんだと思う。「美味しい」と感じたとしてそれをいくつの言い方で相手に伝えることができるだろう。その中で最も適切な「美味しい」という表現を考えてい使い分けられているだろうか?たぶん僕はできていない。
相手に何かを伝えるために言葉を使うのなら、丁寧な言葉の選び方、使い方というのを知ることはマナーのひとつなのだろう。当たり前のことなのだろうけれど、実際に美しい言葉に触れていながらもそのことに気が付かなかったことが悔やまれる。これからでも相手に理解してもらうための言葉について、選択肢を増やしていけたらいいなと考えている。

