色白で痩せて長身の男だった。穏やかな表情をしているが目の奥に不思議な光を宿しているように見えた。初めてその男と会ったとき、物腰の低い丁寧なしゃべり方をするな、という印象だった。少し早口ではあるが誰とでも愛想よく話す話術が備わっていた。きっと仕事ができる男なのだろう。
彼とふたりで話す機会に恵まれたのは初めて会ってからしばらく経ってのことだった。とある会合で再開し、ふたりで食事に行くことになったのだった。最初はビール、そのあとはハイボールを何杯も空けた。仕事論について、人材の育成について熱を帯びた話をしていく。とても充実した楽しい時間だった半面、その熱の本質が僕にはわからないままだった。
しばらくして彼は事業で損害を被った。正確に言うと大きく失敗する前にうまく撤退していた。普通の人なら判断を見誤りそうなところだが、持ち前の冷静な判断力と根回しで被害を最小限に食い止めていた。
最初から僕はだれも信用していませんでしたから、と彼は言った。きっとそうなのだろうな、と僕は納得した。あらゆる意味で彼はリスク管理ができていた。金銭面や人付き合いも含めて。
それが彼自身を孤独にしているようにも見えた。被害を最小限に食い止めた彼は株主や周りの人から賞賛を受けていた。僕が同じ立場だったらきっともっと大きな損害を出していたと思う。そういう意味では優秀な男だ。
彼の抱えた孤独が僕にはひどく気になった。自分の心の中に塀を立てて閉じこもっているように感じた。ビジネスで彼は成功するかもしれない。だけど彼の心の闇はビジネスの成功と反比例するように深くなっていくような気がするのは僕だけなのだろうか?

