子供のころ定期的に人形を買ってきてもらった。大抵は女の人形だったけれど時々動物の人形もあった。なんで男の自分に人形を?と幼心にも不思議に思ったこともあるがすぐに人形に情が移りかわいがっていた。なんとなく恥ずかしい気持ちもあって人目を忍んでひっそりと人形と仲良くしていた。
しばらくたつと新しい人形を与えられた。新しい人形は最初だけうまくなじめないのだが子どもだからすぐに友達になれる。僕は古い人形を投げ捨て、新しい人形との生活が始める。いつものことだ。部屋の隅に投げ出した古い人形の目が寂しげに見える。寂しげに見えるのは僕の気のせいだとわかってはいたが、なんとなく疎ましいので部屋の窓の扉から古い人形をできるだけ遠くに投げ捨てる。
窓の外にはオオカミのようなノラ犬がたくさんいた。飢えてやせ細ってはいたが、眼だけがギラギラと血走った野犬だった。やつらは僕が投げた人形に向かって一目散に走っていくと、互いに奪い合うように人形の腕を引きちぎり、頭をかみ砕き、見る影もないほどズタボロにしてしまう。
仲の良かった過去の友人ともいえる人形がズタボロになっていく姿を見るのが快感だった。飽きたら捨てて新しいものを愛でる。みんな当たり前のようにしていることだ。捨てたものは目の前でボロボロになるのだから二度と出会うことはない。汚いゴミになんかに二度と会いたいとは思わない。
いつか自分も窓の外から捨てられてノラ犬たちにズタボロにされる運命であることに僕は気付いていた。人形を買い与えられているのは自分がまだ飽きられていないだけだと知っていた。自分の運命を恨むより、かわいがられているうちに人形たちに自分と同じ運命をたどらせてやりたかった。愛情を与えてこっぴどく捨てる。それが俺のやり方なんだ。

