毎晩、同じ猫の声が聞こえる。
猫の声を聞き分けることができるから、同じ声だとわかる。
家の猫が扉の前で、開けてって呼んでいるような声。
それが20分ほど続く。
窓を開けると茶虎の猫が民家の灯りに照らされてちらりと見える。
光る眼をこちらに向けて、明らかに警戒している。
誰を呼んでいるの?
ぼくは話しかける。
だけど猫はぼくの言葉が分からないから、
警戒した目でこちらにむけたまま、じっとしている。
こっちにおいで。
今度は声に出さずにいう。
いや。
彼はそう言ってぴょんと暗闇の中に消える。
窓を閉めて部屋に戻ると部屋は凍るほど冷たくなっている。
彼はこの寒さの中、誰を呼んでいるのだろう。
今も彼の声が聞こえている。
