家にいる時間が少ないので、荷物はまとめて時間指定をして受け取ることにしている。
荷物の到着時間通りに家につき、部屋着に着替えてくつろぐ。
ピンポーンとチャイムが鳴る。
20メートルの廊下を歩いて玄関の扉を開ける。
宅配便のお兄さんは愛想よく印鑑を求める。
ぼくも愛想笑いで印鑑を押す。
受け取ったのは筒形の箱。
包装紙をびりびりと破いて中を開けると品の良いシャンパンが入っている。
差出人は4年会っていない古い友人。
短いメッセージは「結婚おめでとう」の文字。
ぼくには結婚の予定はない。
何を勘違いしているのか。
だがぼくはシャンパンが好きなのでそのまま冷蔵庫に入れる。
彼には結婚したと思わせておいてもよいだろう。
ピンポーン。次のチャイムが鳴る。
ちょっと急ぎ足で玄関の扉を開ける。
先ほどのお兄さん。
えへへ。忘れてました。
と言いたげな笑顔。
ぼくもえへへ。とつられて笑う。
大きな段ボール箱。
先週テレビショッピングで買った大型スチームクリーナーだ。
週末はこれで家の中のものすべてスチームをかけてやるつもりなのだ。
お風呂場、キッチン、洗面台、トイレ、冷蔵庫、炊飯器、電子レンジ、長い廊下。
段ボールをびりびりに破くと、中からきりんのようなスチームクリーナーが出てきた。
なんだかかわいいので、意味もなく胴体をなでてやる。
しゅーしゅー。
ピンポーン。次のチャイム。
帽子を目深にかぶったお兄さん。
一言も言葉を発さずに印鑑を押せと紙を差し出される。
どこかで見たことのある人だな、と思い
印鑑を押しながらお兄さんの顔をのぞこうとする。
さっきと同じ愛想のよいお兄さんだ、と気が付く。
お兄さんは顔を見られてあわてて足早に去っていった。
最後の荷物は小さな封筒だった。
なんだろう?
こんなものが来る予定だったかな?
内容証明?
封筒をびりびりと破く。
●●様。
あなたの資産はすべて国が差し押さえます。
そしてすべては競売にかけられます。
家も家具も資産はなにもかもすべてを失います。
ごきげんよう。
税務署より
ぼくは今、きりんにまたがってシャンパンをラッパ飲みしながら、
長い廊下を行ったり来たりしている。
