エチケット袋

ぼくは子供のころから車酔いがひどく鬼太郎袋(と当時は呼んだ)が手放せなかった。

最近ようやく乗り物にも乗れるようになり、エチケット袋(と今は呼ぶらしい)は本来の使い方をしなくなった。

飛行機に乗るときに今でも持って帰ってきてしまうエチケット袋は、

持っているとなぜか昔から安心するツールだった。

 

大人になってエチケット袋の新しい使い道を編み出した。

エチケット袋、という名前にふさわしい使い方だと我ながら思う。

 

ありとあらゆるネガティブな感情(嫉妬、憎悪、呪い、恨み)を吐き出すための袋として使うのだ。

使い方は簡単。

袋を開けてありったけの下品な罵詈雑言を叫び、怒鳴り、わめいた後、

中のものが出てこないように口をきちんと閉じて捨てる。

子供のころに使い慣れたままの所作で、ぼくは自分の中にある汚い感情をエチケット袋に収めている。

 

あんまり大きな声で人にお勧めできる習慣でないことはわかっている。

この閉鎖された世界で、エチケットの名のもとにすべてを封印してくれるツールがあるなら、

ぼくは有効に使いたいと思う。

心が壊れてしまうよりばかばかしいことでもして、遊んでいるほうがずっと楽しいと思うのだ。

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