すきま風の男

今日であった人はとても不思議な人だった。

姿形は特徴のない、平凡な人。

毎日すれ違っていても、すれ違ったことさえ気がつかないような。

 

20代後半と思われる男性。

きちんと折り目のついたスーツを着ており、几帳面な印象を受けた。

 

その人は雲のような人で

話をしていても何を考えているのか、輪郭すらつかむことができなかった。

 

彼は言う。

自分が何をしたいのかわからないのです。

 

うん。

ぼくは相づちを打つだけだ。

 

長い沈黙の後にかれは、それじゃ、と言い残して出て行った。

彼の座っていた椅子には彼の形がまだ残っていた。

 

きっといい人なのだろう。

愛想よく振る舞えば周りにいる人にも好かれるタイプ。

だけどなぜか影が薄い。

 

すーすーと心にすきま風が吹き込んでいるような気分がした。

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