紙辺

空から雪のようにひらひらと舞っていたのは小さな紙辺だった。

道をゆく人々はみな、空を見上げる。

ぼくも高層ビル群に囲まれた小さな空を見上げる。

 

そこには誰の姿も見えない。

鉄の箱は無機質に太陽の光を反射させているだけだった。

 

地面に落ちている紙辺以上の量の紙辺が、まだビル風に乗って舞っている。

あっちへ行ったりこっちへ行ったり、昆虫のように不規則な動きが印象的だ。

なかなか地面に落ちてきそうにない。

 

1辺の紙切れがぼくの手元に落ちてくる。

てのひらでうけとめてみる。

無地のコピー用紙を手でちぎったような形をしていた。

 

そこには鉛筆で書いた文字がある。

とても小さく、弱々しい文字。

「HAPPY BIRTHDAY」

 

誰が何の目的で紙辺を落としたのかわからないが、

今日は誰かの誕生日なのだ、と思う。

 

おめでとう。

今日誕生日のだれか。

 

蒸し暑い夏の1日の不思議。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です