雪の深く降る年のある日、ゆきのおとこは現れる。
雪男とはちがう、ゆきのおとこ。
しんしんと雪の深く降る夜に、
サラサラの雪が人の形になって
ぎこちなく動き出す。
冷たいゆきのおとこには心はないけれど、ふわりと現れて、
こっそりいたずらをしたり、
だれかにメッセージを残したりしながら、
消えるようにどこかに行ってしまう。
春になってあたたかくなるまで
ふわふわとさまよっている。
溶けて水に返るまで。
ゆきのおとこが通り過ぎた後には
ひとつぶのぎんなんが落ちていて、
ゆきの冷たい空気と、冬の残り香がかすかにと感じられるのだという。
