地図を読める人は本当にすごいと思う。
初めて来た場所なのに、一度地図を見ただけですらすらと行きたいところに行ける人。
そういう人になりたいと思った。
昔から行きたいところはたくさんあった。
地図があるところは自分で地図を調べて目的地に向かう。
「北が上だから、この目印を東に向かって、東は右だよな・・・」
地図をくるくる回しながら、何度も同じ道を通って時間をかけて目的地に向かった。
日が暮れて次の日の朝が来て、また夜が来たとしても、あきらめられない目的地があったから。
そうやって目的地を探すうちに少しは地図を見ることに慣れていった。
ようやく人並みに近づく程度に。
今だって地図を読むことはコンプレックスのひとつだ。
地図のない場所の目的地を探すようになって、
地図がある時よりもずっと目的地への到着が難しくなった。
僕が歩いた道を、全部記して後に続く人に地図を残したいと思った。
僕は何度も同じ道を通っていることに気が付かず、新しい地図に新しい道を書き込んでいった。
地図が間違っていたら、後から来る者たちは迷ってしまうことに気が付かずに。
ある時から地図を作るのをやめた。
僕は地図がないほうが歩きやすい。
太陽の位置や角度で方角を知るヒントはあるし、自分の目的地くらい直感でわかるはずだと思った。
その目的地には僕はまだたどり着かずにいる。
役に立たない間違いだらけの地図を握りしめたまま。

