ぎりぎり

夢の中でとても小さな人形と夢中になって遊んでいるうちに、手元から大切なものがするりと音もなく零れ落ちそうになる瞬間に気が付く。

自分が夢の中にいることを知っていて、もう少しこの甘い夢の世界の住人になってしまうところだった。

西のほうで鐘の音は聞こえていた。最初はかすかに耳鳴りのように聞こえていたその鐘の音は、次第に大きくなり近づいてきて、僕は少しずつ夢から覚めていったんだ。

大切なもののひとつはなくしてしまった。後で取り戻すことができるかもしれないけれど、どうやらそれも期待はできない。

もうひとつの大切なものは、まだ手の中にあってかすかなぬくもりを感じさせてくれる。

また冬がやってくるんだ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です