社長を失った会社

スタートアップの小さな会社があった。アイデアマンであった社長が気の合う仲間数人と立ち上げた家族のような会社だった。まだ若く勢いのある会社は着実にクライアント数を増やし、売り上げも伸ばしていた。

ある日社長が急逝した。事情はよく分からない。その日を境に会社はどんどん売上を下げた。社長がいなくなったとしても実務的な仕事はスタッフ全員の力を合わせれば問題ないはずだった。どのスタッフもとても優秀で気の利く人ばかりだったからだ。それでも勢いを失った会社はそのまま失速していった。僕も疎遠になっていった。

あれから数年が経ちその会社の評判を久しぶりに小耳にはさんだ。代表は当時のNO.2の人に変わっていた。堅実な仕事ぶりで売り上げを順調に伸ばしているらしい、とのことだった。前任の社長のようにアイデアで勝負する会社ではなくなっていたが、仕事の正確さや品質は以前の会社の評判を凌駕していた。

前社長を失ったときの会社の消沈具合を僕は見ていて再起は難しいのではないかと考えていた。それくらい会社の雰囲気は落ち込んでいた。どのような経緯で会社が復活したのか僕には知る由もないが、とても喜ばしいことだと思う。自分を欠いた会社がどんどん失速していくことを急逝した社長がどこかで見ていたとしたら悲しんでいたに違いない、と思っていたからだ。今の会社を前社長が見ていたらきっととても喜んでいることだろう。

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